書写と書道

国立奈良教育大学付属小学校で一部の教科で履修漏れ等の問題があったとの報道がありました。

国語科に関しては、報道や報告書によると、毛筆による指導が行われていなかったということです。

 

「大学によりますと、国語の「書写」では、2年間にわたって学習指導要領で定められた毛筆ではなく、筆ペンを使っていました。……学校では今後、不足した教科の補習などを行うとしています。」

「書写」で筆ペン 道徳は全校集会の形 検定教科書使わない授業も 国立奈良教育大付属小が9教科・活動で不適切指導 - 記事詳細|Infoseekニュース

 

こうした報道の中に「書道」という表現を用いているものがありました。

 

「国立の奈良教育大学附属小学校で、1年生から音楽の授業で「君が代」を教えない、書道の授業が行われないなど、9つの教科などで未履修が常態化していた。」

教員が校長に「非協力的」 毛筆でなく「筆ペン」、「君が代」歌わず 未履修が常態化 国立小学校で学習指導要領違反 | 関西テレビ

 

しかし、「書道」は、小・中学校の指導内容としては基本的には扱わず、小・中学校で扱う「書写」とは目的や性質が異なります。

「書道」は、高等学校の芸術科の選択科目として位置づけられ、書の美に関する表現力や鑑賞力を主として育成することを目的としています。

それに対して、「書写」は、国語科の指導内容の一部として位置づけられ、文字を正しく整えて書く力を主として育成することを目的としています。

 

さて、国語科書写において「毛筆」を使って指導すべきところを「筆ペン」で代替したことが不適切とされているのですが、次のような疑問が生じました。(調べ切れなかったため疑問の回答はありません。いつか本格的に調べてみようかとも思いますが、ご存じの方いたら教えてください。)

 

1)筆ペンは毛筆ではないのか。

筆ペンにもいろいろな種類があります。硬筆タイプは毛筆とはいえないでしょうが、毛筆タイプのものは毛筆に含まれないのでしょうか。

筆ペンが毛筆に含まれないとするような学術的な根拠や法的な根拠が存在するのか、気になるところです。

 

2)筆ペンでの指導(毛筆を使わない指導)は、毛筆での指導に比べて学習効果が劣るのか。

この疑問を明らかにする研究が存在するのかは書写研究を専門とするわけではないため把握できていませんが、今回のように毛筆を使わずに書写を学習した児童と毛筆を使って書写を学習した児童の文字を比較しなければ、毛筆指導の学習効果の実証は難しそうな気がします。

 

幼い頃に習字教室や小学校で毛筆を使っていたにもかかわらず、自分で書いたメモ書きを読み返せなくなることがしばしばある自分の経験から考えると、毛筆を学習具として使うというだけでは大差なさそうな気がしますが、どうなのでしょうか。

 

履修漏れとの指摘を受けた学校は補習を基本時数よりは凝縮して行うそうなのですが、「毛筆を使用する書写の指導は硬筆による書写の能力の基礎を養うよう指導する」という目的に照らすと、書字技能が一般の毛筆指導を受けた児童に比べて現状大差ないのだとすれば、ほぼ免除でよいのではないかと思っています。