「言葉の意味が分かること」(光村図書5年)の教材分析

 光村図書5年の教科書に掲載されている今井むつみ氏の「言葉の意味が分かること」という書き下ろし教材を用いた授業を観察させていただく機会がありました。

 文章の要旨を捉えることを学習目標と位置づけた教材になっているのですが、その学習目標を達するにふさわしい教材と感じたので、言語化してみます。

 

 ここでは要旨を筆者が最も伝えたいことをまとめたもの程度に捉えておきます。

 まず、要旨を捉えるための方法として考えるのは、大事なことはだいたい文章の冒頭か終末(いわゆる「はじめ」と「おわり」)で述べているだろうということです。これでおおよそのあたりをつけられます。

 とはいっても、冒頭、終末が一文で端的に示されていないこともあります。また、文の意味がわからなければ、冒頭・終末に大事なことが書かれているという確信が持てません。

 そこで、次に考えるのは、筆者の考えを強く表す接続語や文末表現がないかを探すということです。

 本文では、「しかし」という前段を否定して自身の見解を示す際に用いられる接続語と「つまり」という前段の内容をまとめて自身の見解を示す際に用いられる接続語が置かれ、文末も「~のです」や「大切になる」「必要があります」という筆者の判断を示す表現が置かれています。 また、「さらに」という添加を表す接続語によって、筆者の主張が一つではないことが表されています。

 このような箇所が要旨をまとめる際に大事な要素となるでしょう。

 

 しかし、重要なのは、それらをつなぎあわせるだけでは筆者の伝えたいことを受け止められていない、ということが明らかになるようになる点です。

 それがよく表れているのが「「面」」という表現です。本文において、鍵括弧(「」)が多用されていますが、「面」と「点」はそれ以外と用法が異なり、辞書的な用法と異なることを表しています。そのため、「面」や「点」という表現をそのまま書き写すだけでは要旨をうまく表現できないため、筆者の例示に基づいてその意味を解釈し書き換える必要が生まれます。

 テクニックとして本文の言葉をつなぎあわせるだけでは要旨が作成できない形になっており、また、本文の内容自体が言葉の意味理解の複雑さを考えさせるものであり、技能的にも価値的にも優れた教材であると思います。