教材配列の意図

小学校の「書くこと」の教材として、「けん玉の作り方」(光村・2年下)と「いろいろなすがたになる米」(光村・3年下)という文章が掲載されています。

この二つの文章を読み比べてみると、いずれも「はじめ・なか・おわり」の三段構成になっていて、「なか」の段落の頭には「まず、次に、それから」、「まず、次に、さらに」とほぼ同じ接続表現が用いられています。

これらをみると、どちらの教材をどちらの学年で用いても良さそうな気がしますが、なぜ「けん玉の作り方」は2年生の教材で、「いろいろなすがたになる米」は3年生の教材になったのでしょうか。

 

いずれの文章も教材ですので、その学年の子ども達に学んでほしいことが何かあるはずです。

教科書は学習指導要領に基づいて作成されるため、学習指導要領を確認してみます。

学習指導要領では「情報の扱い方」に関する指導事項として、小学校低学年では「共通,相違,事柄の順序など情報と情報との関係について理解すること」、小学校中学年では「考えとそれを支える理由や事例,全体と中心など情報と情報との関係について理解すること」という記載があります。

 

この指導事項を観点として教材を分析してみましょう。

「けん玉の作り方」の「まず、次に、それから」という展開は、おもちゃの作成手順という事柄の順序に従って文章が記述されていることが分かります。

一方、「いろいろなすがたになる米」の「まず、次に、さらに」という展開は、「米には、いろいろな食べ方のくふうがあります」という考えの事例を列挙するように文章が記述されていることが分かります。

後者の場合、接続語を取り外して段落を入れ替えても文章が成立しますが、前者の場合には段落を入れ替えるとただしくおもちゃを作成することができなくなります。後者の「まず、次に、さらに」は事柄の順序を示すのではなく、語りの順序を示しているようです。

 

このように考えてみると、2年生に順序、3年生に具体・抽象という論理関係を捉えてほしくて、このような教材配列になったと捉えることができそうです。